天守の予備知識

具体的に現存12天守をみていく前にどの天守にも共通してある設備、装飾など知っていれば わかりやすくなる基本用語(予備知識)を説明しています。ほかにもあるとは思いますが、12城にちなんで 12項目にしてみました。

天守の型写真

望楼型と層塔型

天守の型は2種類、入母屋つくりの屋根に望楼をのせた「望楼型」(写真左、丸岡城)と五重の塔のようなタワー型の「層塔型」(写真右、宇和島城)、現存天守では7城が「望楼型」、あと5城が「層塔型」です。

天守の写真

天守の構成

天守の構成は4タイプ、単独で立つ「独立式」(写真左上)、天守と櫓がくっつく「複合式」(写真右上)、天守と小天守を渡櫓でつなぐ「連結式」(写真左下)、天守と複数の小天守と櫓を渡櫓でつなぐ「連立式」(写真右下)に分かれます。

破風写真

屋根飾り、破風

装飾のついた屋根のことを破風といいます。形状によって名前がついています。 番号1のカーブ(曲線)のものが「唐破風」、番号2の「入母屋破風」、番号3の「切妻破風」などがあります。写真は彦根城の天守です。

廻縁と高欄写真

廻縁と高欄

天守最上階の外側に取りつけられたベランダのような縁側が廻縁(まわりえん)、そこに設置された手すりが高欄です。現存天守でも取り入れられていますが、実際に外に出て歩けるのは犬山城と高知城の二城だけです。写真は犬山城です。

華頭窓写真

華頭窓

もとは寺社建築に用いられる窓、格式を高めるために使われました。天守の最上部に設置されることが多いですが彦根城など2層に使われている場合もあります。犬山城のように枠だけで窓としては機能してない例もあります。

狭間写真

格子窓

格子の間の隙間は鉄砲や弓の狭間としての役割もあります。写真は松本城の格子窓で外が突上戸形式の古いものです。防火性を考えて漆喰を塗った土戸にして,吊るすには重いので引き戸としているものが多いようです。

狭間写真

狭間

天守や櫓、堀などの壁面に開けられた攻撃用の小窓のことです。丸、三角、四角と形はさまざまで、矢狭間、鉄砲狭間と用途別にもなっていたようです。 敵に気づかれぬように、写真下(彦根城)のように壁土などで隠された隠し狭間もあります。

石垣写真

妻飾

破風の三角形の壁面に施された装飾のことを妻飾といいます。写真の犬山城の天守は書院造寝殿にも用いられる格式高い木連格子(狐格子)の妻飾りです。白い壁面をそのままみせる、塗籠や銅板張り、蟇股(かえるまた)等の種類があります。

石垣写真

石垣

加工方法で3パターンに分けられます。加工なしの「野面積み」(写真下)、 表面を平らにした「打ち込み接ぎ」(写真左)、隙間をなくした「切り込み接ぎ」(写真右)、積み方はラインを揃える「布積み」、揃えない「乱積み」2種類あります。

石落し写真

石落し

床に開いた穴から石を落として敵を攻撃すると思われていますが、実際には石は落としていないようです。ではどのように使われるかと言うと、鉄砲を下に向けて撃っていたと考えられます。 写真は松本城の袴腰型で一番多いタイプのようです。

鯱写真

鯱(しゃちほこ)

姿は魚で頭は虎、尾ひれは常に空を向き、背中には幾重もの鋭いとげを持っているという想像上の動物です。建物が火事の際には水を噴き出して火を消す役割。織田信長が安土城天主(天守)の装飾に使って普及したとか、写真は高知城のものです。

天守の壁写真

天守の壁(白黒)

大まかには黒い天守が豊臣方、白が徳川方です。白い天守の城は壁に白漆喰を塗っていますが、黒い天守は壁の色ではなく張っている下見板の色です。下見板には松煙と柿渋をまぜた墨が塗られています。