22以上 長年IT企業に勤務していた職業経験とアジアを中心とした留学生教育の経験、そしてAIデジタル研究所所長としての研究を踏まえて、「AIデジタル社会」という新しい経済社会システムが成立しつつあるマクロなトレンドをテーマに、講義しました。〔1〕 現在、2つの革命が進展している その第1は第4次産業革命であり、第2は第4次情報革命であることを、歴史的に説明し、複眼的視点が必要なことを強調し、生成AIも歴史的に位置付けました。〔2〕 3度のパラダイムシフト ICT業界は最も技術革新が激しい業界であり、技術革新の原理や法則が根本的に変わるパラダイムシフトを3回も繰り返していることを、説明しました。〔3〕 第4次産業革命を支えるIT革命の最新動向 その最新動向を、5つにまとめ説明し、この革命のコアとなるテクノロジーが人工知能であるとしました。〔4〕 DX・AI・ITビジネスの成長と各ビジネスの関係 マクロな市場動向として、国内DXとAIビジネスが高成長する予測を提示しました。 それに対し、ITサービス市場は安定成長が見込まれると予測しましたが、ITエンジニアが不足していることを指摘し、併せてIT・AI・DXの密接な関係を図で示し説明しました。 特に、直近でAIシステムがあらゆる産業と業務で展開されつつあることを表で示しました。 まさに「A I デジタル社会」が形成されつつあることを、明らかにしました。〔5〕 新しい経済システムの形成 ものづくり・エネルギー生産による産業資本主義経済システムが、20世紀後半からのICT産業の発展により、データ・情報・知識創造が主導する「知識資本主義経済システム」 へと転換したことを時系列で説明し、その経済システムの特性、その担い手である「知識職業人」の台頭を明らかにしました。 加えて、今後の経済システムの発展において「労働力不足の進行をAIで補完」することが重要だということを産業別に明らかにし、今後は、人間主導のAIとの協業に基づき、経済システムの制御が必要となることを強調しました。〔6〕 未来のAIデジタル社会 ― 6つの論点 講義の締め括りとして、6つの論点を提起しました。 第1は、環境問題の深刻化を食い止めるAIデジタル社会をいかに設計するかという論点 第2は、少子化・高齢化で経済が定常状態になる中で、AIデジタル化の在り方という論点 第3は、A I は人間を超えるのか、歴史は終焉するのか、という論点 第4は、AIビジネスは、知恵や芸術を創造できるのか、心を持ちうるのか、という論点 第5は、未来の企業経営において、AIは限定合理性を突破できるのか、という論点 第6は、生成 AIを歴史的にどう捉えるか、という論点 この6つは、あくまで論点として提起しました。 締め括りとして、AIデジタル社会分析のための4つの方法論を推奨しました。 このように時間的にも空間的にも広範囲の講義となりましたが、学生の皆さんの情報工学の学習に、少しでも参考になれば幸いです。vol. 125 講師:堀切 達也氏(学校法人中央情報学園)2025年5月30日 AIデジタル社会の成立
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