サイプレスNo.125
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202025年5月16日 生成AIだけがAIじゃない!識別AIの実務最前線:当社での取り組みから(まとめ)講師:渡邊 泰博氏(パシフィックシステム株式会社)くる。 最近はAIといえば、生成AIが話題の中心のようだ。2012年のディープラーニングの成功によって、モノを検査・判定する「識別AI」の大きな発展があり、それも当時は大きく取り上げられてはいたが、2022年末のChatGPTの登場以降はAIといえば生成AIとなった感がある。しかしながら「識別AI」は企業において着実に効果的に応用されてきている。今回はその識別AIについての実務的な話をしたいと思う。1.AIの社会情勢 ディープラーニングで第3次AIブームとなってから、AIへの民間投資は着実に伸びている。AI全体としてはここ数年頭打ちではあるが、生成AIは2023年から急速に伸びており、生成AI市場は今後も高成長が予測されている(2030年の需要額見通しでは、世界市場2110億ドル、国内市場1兆7774億円、2032年では世界市場1兆3600億ドルと予想)。 とはいうものの、期待が大き過ぎるためか、期待したほどの成果が得られないケースも多く、現在は「幻滅期」に入っているという分析もある。今後は費用対効果が重視され、着実に効果が期待できる方向へ移っていくとみられている。 1補足.生成AIについて  生成AI(LLM)のすごさは、今までは大変困難と思われていた人間の常識をコンピューターが獲得したように見えていることであり、画期的であった。しかし、生成AIは単語や文脈のパターンを確率的に処理しているだけで「意味」や「意図」を理解しているわけではない。よって、計算問題、論理的思考、知識という点においては、苦手であり、時々間違いを犯すこともある。そのことを理解しておけば大変有用なツールであり、企業内でも活用がどんどん進んでいる。  ・サポートデスク  ・文書案(案内状、御礼文、おわび等々)の作成やチェック  ・アイデア案  ・契約書等のチェック  ・音声からの議事録作成  ・資料の要約  ・翻訳  ・プログラムの作成・デバッグ・リバースエンジニアリング(論理的思考が苦手なので注意が必要)  などなど...2.AI適用の実務(識別AI) 当社で実施している画像検査における識別AIの実務について述べる。識別AIとは対象物が何かを認識、分類したり、異常を検知するものである。 企業がAI導入する場合、 ・AIに過度な期待を持ちAIを導入することが目的になっている ・データ(質と量)が揃わない  ・導入後の保守を想定していないという状況では決してうまくいかないので、注意が必要である。 導入が決まった場合でも、工場などの現場に導入する前に比較的安価な形で簡易的な環境を作り、実験を通じて期待される効果が得られるかを検証し、実用化の判断をするステップが必要である。これをPoC(概念実証)という。このステップを経て、具体的な実装へ向けて設計・開発・導入をしていく。導入後も効果を維持していくために、AIモデルの更新などメンテナンスも重要である。 AIの理論や手法自体は難しいものだが、実務では以下のようなAI技術以外の工夫・技術が重要になってvol. 125

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