サイプレスNo.117
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222つの「DXレポート」から読み解く、デジタルトランスフォーメーションの現在位置 DXという言葉を様々なメディアなどで毎日のように見聞きされていると思います。 デジタルトランスフォーメーションという言葉は元々2000年代の初めにスウェーデンの学者が提唱したものらしいですが、日本で認知されたのは2018年(今から5年前)の9月に経済産業省が「DXレポート」という報告書を公表し、様々なメディアで取り上げられ、広く知られるようになりました。 全体で60頁ほどのレポートでIT分野から見た日本企業というか日本社会の構造的な問題点を炙り出す、大変に意義ある内容です。経済産業省のHPから閲覧できますので是非一読いただければと思います。【2025年の崖】 日本企業は事業部門毎にバラバラにしかも過剰にカスタマイズされたシステムが多く、またそれらの運用などに携わる人の知見に依存し過ぎている、属人的でブラックボックス化している。 既存のシステムを維持している人員が今後定年を迎え退職して行くことを考えると、今既存のシステムを見直し、DXを進めないと2025年以降年間で最大12兆円の経済損失が見込まれる。 ①日本企業の約8割がレガシーシステムを抱えており年数を経たものも多く、業務が属人化していてブ【コロナ禍が社会の背中を押す】 自社のビジネス戦略を積極的に練り直すためにデジタル技術を如何に利活用するかではなく、コロナ禍ラックボックスとなっている。 ②レガシーシステムの維持や補修のためIT投資の大半が割かれていて、現状維持費用、ランザビジネス予算が9割を超える企業が4割もある。従って前向きな戦略投資が十分に出来ない。 ③IT人材が偏在している。日本はユーザー企業に3割、ベンダーに7割。アメリカはその真逆。【2025年の崖を回避するために】 既存のレガシーシステムを見直し、廃棄するもの、塩漬けにするもの、刷新するもの(モダナイゼーション)などに仕分けし、前向きな投資に資本を振り向けDXを実現出来れば、2030年の実質GDPは130兆円を超える押し上げ効果があるとしています。 ※DXを推進してゆく上でのKPI5つ ①IT予算の使いみちを既存システムの維持に6割、前向き投資に4割とする。 ②サービス追加にかかる期間を現行の数カ月から数日間に短縮する。 ③IT人材の偏在を正し、企業とベンダーとで50-50とする。 ④保守要員が減り前向きな投資が増えることでIT人材の年収を倍増させる。 ⑤IT業界の成長率を現行の1%程度から6%に引き上げる。【DXレポート2の公表(2020年)】 DXレポート公表から2年後の2020年12月に中間報告的な位置づけの「DXレポート2」が公になりました。 2020年の10月に情報処理推進機構(IPO)という団体が企業約500社に対してDXへの取組みを調査しましたが実に9割以上が全く取り組めていないと回答しました。 また経営層の4割近くが重要性は理解するが現場に任せている、また無関心とする回答も5%あり、トップのコミットメントが不十分ではとの見方がなされました。 何れにしましても2018年のレポートを受けての企業の反応はビビッドなものとは言い難く、大手ベンダーも様子見的な雰囲気を感じなくもありませんでした。そんな中コロナ禍を起点にした、言葉を変えますとコロナ禍を起爆剤にした変化の兆しは確認できます。2023年5月19日 講師:原 俊樹氏(AGS株式会社)

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