サイプレスVol.102
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 どのようなことかと申し上げますと、会社帰りに紙おむつを買いに来たお父様が、ついでに自分へのご褒美としてビールを買う割合が多いことを、購買データの分析で突き止めました。つまり紙おむつのそばにビールを陳列することで、顧客に同時購買の意欲を沸かせることができる、といったものです。 このような一見何も関係ない事象同士に、高い購買相関があることを突き止めれば、同時購買の機会を作ることで売上の向上を図ることができる事例です。 この発見はIT技術の発展の成果であります。 銀行も高いIT技術を活用して膨大なお客様のお取引情報から、今、住宅ローンをお考えなのか、投資信託の購入を希望されているのか、など、それぞれのお客様の金融ニーズを統計的に導きだし、そのサービスをタイムリーに個々のお客様にご提供することでお取引の拡大を図っています。5‐3.銀行におけるIT活用事例 このような顧客動向の推測が、ITを活用してデータベースを検索することで可能となりますが、人工知能によりそれを更に進化させ、コンピュータ自身が過去の傾向や画像認識により、統計分析のみならず、今や人間が行う判断まで行うことが可能となる時代が訪れています。 世界で最も難関なゲームと言われている囲碁の世界で、韓国の名人を人工知能が破ったのは驚きの事実であり、近い将来さらに進化することは確実と言われています。 人類の未来は明るく、我々の行動範囲は益々拡大し、より未知との体験ができるワクワク感、ITが人間と共存することでより豊かになる人間社会、天使の世界ですね。 一方でITが人間の枠を超え、あらゆる判断を行い、その判断の根拠を人間が分からない、そんな世界は脅威であると思いませんか。6.AIと人間の共存 人間社会の秩序や倫理観が根本的に変わる未知への不安など、皆さん様々ではないでしょうか。 いずれにしても否定できない事実は、ITの演算速度の進化や複雑なアルゴリズムの解析が可能となったことにより、人工知能が急速に進化し、IT自身が人間のようにものを考えることが可能な時代がすでに始まっているということです。 そしてIT技術の進化はIT主導による新たな産業革命を生み、我々の生活・社会・経済の大転換期が確実にやってくるものと思われます。 そしてすべての産業が、人工知能を中心に相互に関係性を持ちながら、同時多発的かつ革命的に変化していく時代、それが第4次産業革命です。 またロボットが人間に代わり、単に事務処理を代替するだけでなく、かなりの分野の知的労働にも参入することになると思われます。 あらゆる分野で人出不足が大きな課題である日本にとっては、人工知能の活用は新たな成長戦略を生み出すエンジンになることは間違いありません。 国も国家戦略の中で、ロボットや人工知能を今後大いに推進すると位置づけております。 このような進化は人間にとって便利という、快適で豊かな生活環境を提供してくれることになります。 そして近い将来、今以上に賢く便利な世界が待ち受けていると期待します。 しかし一方で、幸福で豊かさの裏に人間が過去に経験したことのない、未知の影が潜んでいるように感じてなりません。 それが2045年問題、シンギュラリティと呼ばれている、コンピュータの知性が人間を超える世界が現実になると言われています。 先日亡くなられたホーキング博士も、「人工知能の進化は、人類の終焉を意味する」とまでおっしゃっています。10vol. 102

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