ふるさとは野菜と野草の宝庫
私の故郷都幾川村は小さな山村ですが豊かな自然に恵まれたところです。春早く蕗の薹が淡い黄緑色の芽を出し、タンポポもスミレも黄や紫の花を咲かせ、田の面をレンゲソウがピンクに彩ります。畑では春の野菜がすくすくと育ち、冬から春へ一斉に装いを変え有史以来新鮮でおいしい自然の恵みを人々に与え続けたのです。そして、都幾川の自然は四季折々に美味しい食材を供給し、人々はふるさとの味家庭の味を創造し、それを伝承してきたのです。
野菜の栽培や食草の繁殖に適した気候の埼玉県には、ふるさとの味、家庭の味が各地に生まれ、「親から子へ 子から孫へ」と伝えられてきました。ふるさと埼玉の豊かな自然に恵まれた野菜や食草は、栄養に富み、味もよく、何よりも人々の健康によいことです。「彩の国は
野菜の国」と呼ばれるように、これほど健康によい野菜に恵まれた地域はほかにはございません。そして、ここ埼玉で創造され幾代にもわたって伝承されたふるさと料理の味の良さは、昔の人の知恵を強く感じるほどおいしく、美しく、清潔で、栄養豊かです。
私は、ふるさと埼玉に伝わる野菜と野草料理に、“健康に良い”というスパイスをちょっと加えて新しい料理を1日1食ずつという意味で365品考案して、この本にまとめてみました。『古き壷
新しき酒』の諺のように、ふるさと料理に新しい感覚で味つけした野菜料理を、是非味わってください。
子供のころ、草原でレンゲの花を摘んだ思いでをお持ちの方は多いと思います。春の野に出でて、童心に返って摘んだレンゲ草が、その晩のお夕食にお浸しで並んだとしたら、何と夢のある献立ではないでしょうか。
この本には、このような楽しく美味しいお料理が沢山紹介されております。皆様のお手元に置かれて豊かな埼玉の自然を味わってください。
1999年5月
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